食べさせる一族1
わたしの知っているある家族の話を紹介したいと思います。
西城真由子さんは暗かった。
性格ではない。
『食』とか『食卓』に関するイメージ。
それが彼女の場合、幼いころから暗かった、のである。
その原因は父親にあった。
彼は食卓で必ず小言をいいだした。
娘の『行儀の悪さ』にはじまり、妻の『気のきかなさ』、オカズの『味付けの薄さ』に至るまで……あらゆる不満が、家族の集まるその機会を利用して明らかにされた。
また少しでも家族に反論の兆しが見えると、浴びせられる言葉も決まっていた。
「誰に食わせてもらってるんだ」子どもはたしかに、親に食わせてもらって育つ。
お父さんの主張は正しい。
ただ、正しい主張は、それにふさわしい場所でしなければ効果はない。
食卓でそれを実行した場合、結果は『飯をまずくする』だけだった。
真由子さんは就職が決まると、早々に家から離れた。